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【参加レポート】ネットワーク初心者がIETFに初参加した話

本記事の内容は個人の見解によるものです。

この記事 is 何?

約8年ぶりにIETFが日本で開催されるということだったので、IETF #116 Yokohamaにオンサイト参加してきました。初参加だったので、今後初めて参加される方や参加を迷われている方のお役に立てるように、良かったことや学びなどを書き残させていただきます。

まず、私の結論を先に述べておきます。 ネットワークエンジニアにとって、IETFはとても貴重なイベントです。 初心者でもIETFに参加するメリットは大きいため、少しでも興味がある方は深く考えずに参加してみることを強くお勧めします。

なお、IETF自体の説明やイベントの様子については、他の方が記事にしてくださっているので、ここでは割愛させていただきます。
IETF自体については、後述する「IETFの歩き方」という動画が分かりやすかったです。
また、イベントの様子については、こちらの方々の記事が非常に分かりやすいです。

筆者はどんな人?

社会人6年目にして転職し、約半年前からネットワークの勉強をはじめました。映像や音声などのメディア通信の専門家を目指して、主にWebRTCに関する技術調査を行っており、最近はRFCを読解する機会がかなり多くなっています。

前職がIoTデバイスを開発するエンジニアだったため、ネットワークのベースの知識はありますが、インターネットの標準化に関して提言するレベルではありません。タイトルの通り、ネットワーク初心者です。 また、英語力については日常会話レベルです。専門的な用語を使ってテンポよく会話をすることはできません。

ちなみに、今回特に興味があった議題はWebTransportとMedia over QUICでした。

良かったこと

  • インターネットが標準化されていく過程を肌で感じられた
  • 様々なエンジニアの方々と交流ができた
  • 今後の学びのモチベーションを得ることができた

インターネットが標準化されていく過程を肌で感じられた

IETFではネットワークエンジニアが世界中から集まり、日頃考えているインターネットの課題や解決方法について議論を交わします。Big Techレベルの大企業や有名な研究機関から来る人も数多くいるにも関わらず、全員が所属という鎧を脱ぎ捨て、一人のエンジニアとして真剣に、かつ謙虚に議論を重ねることでインターネットの仕様を決めていきます。

IETFに参加する前は、RFCはただのインターネットの仕様が書かれたドキュメントという認識しかできていませんでしたが、インターネットを良くしたいと考えているエンジニアの叡知の結晶だということに気がつきました。大げさかもしれないですが、背景を理解したことで見え方が変わったことは確かです。

様々なエンジニアの方々と交流ができた

IETFの肝は他の参加者とのコミュニティを形成して一緒にイベントを楽しむことにあると言っても過言ではありません。私はセッションの合間に勇気を出して声をかけてみたり、SNSで募集されている食事会に応募してみたり、会社の先輩が設定していた接待に混ぜてもらったりと、様々な方法で知り合いを作ることに成功しました。

IETFに参加するエンジニアは謙虚で優しく、かつ偉大な方ばかりです。知らない人に話しかけたり、交流会に応募することは大変勇気が必要ですが、初心者であれば間違いなく歓迎してもらえますし、偉大な方々と交流ができるという莫大なリターンが手に入ります。ぜひとも勇気を出しましょう!
(私が参加している回であれば、ぜひ私にもお声がけくださいww)

ちなみに私は今回こちらの食事会に応募させていただき、参加者の皆様には非常に良くしていただきました!ありがとうございました!
特に、こんなに素敵な場を主催してくださった@Jxck_さんと@arayaryomaさん、IETFのあれこれについて非常に親切に教えてくださった@flano_yukiさん、心から感謝しています! (こちらの方々は標準化について情報を発信していますので、IETFに興味があればフォローすることをお勧めします)

今後の学びのモチベーションを得ることができた

私はIETF参加を通じて、ネットワークの知識や英語力を磨きたいというモチベーションを得ることができました。もっと知識や英語力を身に着けて、今回以上に海外の方と交流したり、いずれ標準化の議論に参加したいと思ったことが理由です。

技術の知識や英語力が欲しいというのはエンジニアであれば誰もが漠然と思っていることかもしれないですが、IETFのような具体的な活用場所に巡り合えることのメリットは大きいのではないでしょうか。

学び

  • 予習の時間を確保しよう
  • ソーシャルイベントを重要視しよう
  • 個人として参加していることを意識しよう

予習の時間を確保しよう

IETFは策定中の仕様について議論されているため、そこに至るまでの背景について理解をしておくことが攻略の鍵となります。逆に背景を理解していない状態だと、議論の内容を追いかけるのは難しくなります。

また、もちろんメディア通信だけではなく、数多くのプロトコルについて議論が行われます。例えば、次世代のHTTPについて、セキュリティについて、ネットワークの運用について、etc. と非常に多岐に渡っていますので、予習を頑張った分だけ興味のあるセッションを楽しむことができます。
(もちろん、すべてのセッションに参加する必要はありません)

IETFの参加を決定したら、なるべく予習できる時間を確保しておきましょう。なお、予習時間を取ることができなかったら意味がないのかと言えばそんなことはなく、リアルタイムに取られている議事録を見たり、セッション終了後に公開されるアーカイブ動画を見ながら理解を深めることはできます。あくまでも予習をしておいた方が議論をスムーズに理解でき、セッション自体を楽しみやすいということです。

IETF自体の勉強(IETFは標準化プロセスの中でどの位置づけなのか、etc.)も必要になりますが、こちらの「IETFの歩き方」という動画が非常にわかりやすかったです。

ソーシャルイベントを重要視しよう

エンジニアであれば技術的な議論が行われるセッションへの参加を重視するかもしれませんが、連日開催されているソーシャルイベントにも参加することをお勧めします。英語力がないからまた今度でいいやという方もいらっしゃるかもしれませんが、それは非常にもったいないです。英語がわからなければ日本の方を掴まえればいいですし、英語がうまく話せなかったとしても、その経験が学習のモチベーション向上に繋がります。

ソーシャルイベントには基本的に食べ物や飲み物が用意され、中には現地の名産品を揃えてくれる観光イベントもあります。 IETF #116 Yokohama にも美味しい寿司や日本酒を楽しめるイベントがありましたが、私はそれを知らなくて参加できず、非常に後悔しています。

注意点として、ソーシャルイベントには事前予約が必要なものもありますので、参加登録後にチェックしておきましょう。

個人として参加していることを意識しよう

IETFは会社の代表としてではなく、個人として参加するイベントです。自分の会社名を出すこと自体はOKですが(参加証にも記載される)、それを元にビジネス色の強い話をするのはあまり好まれません。名刺を交換するシーンはありましたが、積極的に交換する雰囲気にならないことも多かったので、その辺りは空気を読む必要がありそうです。

どちらかと言えば、SNSでの交流に繋がることが多そうですので、事前にアカウントを用意しておくことは必須だと思われます。

まとめ

上記の通り、IETFは標準化や情報収集だけではなくコミュニティ形成もできる非常に素晴らしいイベントですので、参加を迷われている方は参加してみることを強くお勧めします。 最初は標準化の議論に参加できなくても、今後少しずつ知識を身に着けて、いずれ何らかの形で貢献できれば十分だと思います。現在標準化活動に参加している方のほとんどは、初回からバリバリと議論に参加できていたわけではないはずです。
(例外はあるのかもしれませんが・・)

念のためですが、IETFがいくら個人としての参加の色が強いイベントだと言っても、会社に援助してもらって参加する場合は得られた情報の報告も頑張りましょう。

最後に、私としてもこれをきっかけに標準化に関する記事をどんどん書いていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします!